THE BOOK GUIDE

本の海に飛び込む、とにかく本を読む人のためのブログ。

佐藤優「国家の罠」

2005年初版発行、佐藤優国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて」

新潮文庫刊行、毎日出版文化賞特別賞。

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【概略】

ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた――。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行!(新潮文庫公式サイトより)

 

 

【本書を読んだ目的】

佐藤優の原点を探るため。

これまで佐藤優の著作を何点も読んできたが、原点にあたる本書は未読だった。

500日以上に及ぶ"小菅ヒルズ"体験とは何だったのか。

【本書を読んだ結果】

佐藤優が定期出演しているラジオで話していた、911当時の田中真紀子大臣の仰天行動や収監後の検察との闘いといったエピソードは本書の内容そのままであった。
強烈な体験が佐藤優の執筆活動に生きていると分かった。

 

 

【印象的フレーズ】

小泉政権成立後、日本は本格的な構造転換を遂げようとしています。

内政的には、ケインズ型公平配分政策からハイエク型傾斜配分、新自由主義への転換です。
外交的には、ナショナリズムの強化です。

ケインズ経済学の主張は市場経済は放っておくと不安定になる、というものだ。
対してハイエク経済学の主張は市場経済に任せ計画経済の行き詰まりは独裁者を生む、というものである。
小泉改革から15年を経た2020年は新自由主義は加速し、ますます公助より自助が重視されている。 

 

「国民の知る権利」とは正しい情報を受ける権利も含みます。正しくない情報の集積は国民の苛立ちを強めます。

閉塞した時代の状況の中、「対象はよくわからないが、何かに対して怒っている人々」が政治扇動家(デマゴーグ)に操作されやすくなることは、歴史が示しています。

コロナウイルスの話題が席巻する2020年。
正しい/正しくない情報の見極めが更に重要になった。

不安になった人々が「自粛警察」「マスク警察」に変貌していく現在の姿に重なる。